机に積まれたプレスリリースの束から1枚を手に取り目を通す編集者と、その先に浮かび上がる新聞紙面の骨格。見出しの位置だけが赤く示されている

プレスリリースが載らない理由。元新聞記者が明かす、記者が「一瞬」で見ているもの

1日100通以上。私がいた新聞社の本社に、FAXで届いていたプレスリリースの数です。

そのほとんどは、記事になりません。

結論から書きます。プレスリリースが載るかどうかは、書く前の段階でほとんど決まっています。文章のうまさではありません。デスクや記者が目を通すほんの一瞬で、記事の形が浮かぶかどうか。そこで分かれます。

一朶の雲株式会社は、元新聞記者が立ち上げた会社です。熊本・九州の企業の広報戦略、採用広報、コンテンツ制作を手がけています。リリースを受け取る側と、企業の側に立って書く側。両方を経験してきたからこそ書けることを、この記事にまとめます。

記者がリリースの何を見ているのか。どういうリリースが置かれてしまうのか。そして、明日からできることは何か。

この記事の要点

  • 記者はリリースを「読む」のではなく、その場で記事を「組み立てて」いる
  • 置かれるリリースには型がある。①旗が何本も立っている ②画が想像できない
  • 通るのは、社会的な大義名分があるもの。関係のない第三者が応援したくなる文脈があるか
  • リリースは書く前にほとんど決まっている。だから企画の段階から逆算する

編集局に届いたリリースを、最初に手に取るのはデスクです

編集局に届いたFAXを最初に手に取るのは、基本的にデスクです。出稿の可否を判断する、現場の責任者にあたります。

デスクは届いたリリースを、一目で判断します。記事にするに足る情報かどうか。

デスクが席にいないときは、外に出ていない記者が手に取って、デスクに見せます。このとき記者も、ただ運んでいるわけではありません。ちらっとでも、ちゃんと内容を認識しています。

広報を担当している方からすると「どうせ読まれていないんだろうな」と思うかもしれません。でも、受け取る側にいた人間として言えば、読んではいます。自分の担当しているジャンルであれば、なおさら。

読まれ方が、想像と違うだけなんです。

記者は読んでいるのではなく、記事を組み立てている

では、その「一目」で何を見ているのか。

一瞬で、記事の構成が目に浮かぶかどうかです。

見出しは立つか。リードに何を置くか。写真は撮れるか。誰に話を聞くか。どのくらいの行数になるか。そのあたりが、ぱっと像になるかどうか。

とくに見出しについては、あらゆる想像をめぐらせます。希少性はあるか。権威性はあるか。新鮮か。感情に訴えるものがあるか。

つまり受け取った側は、リリースを「読んで」いるというより、その場で記事を「組み立てて」いるんです。リリースは読み物としてではなく、材料として見られています。

近いのは、映画の予告編です。端的に、ストーリーが思い描けるかどうか。

本編をすべて見せてもらう必要はありません。この時点では、長い記事になるのか、30行ほどの短い記事になるのかも決まっていない。ただ、予告編が頭の中で流れるかどうか。そこで手が止まります。

  1. リリースが届く本社には1日100通以上。FAXの束として積まれる
  2. デスクが一目で見るデスクが不在なら、社内にいる記者が目を通してから渡す
  3. 頭の中で記事が組み立つか見出しは立つか。リードに何を置くか。写真は撮れるか。ここで像が結ばなければ、先に進まない
  4. 下調べをするその会社がこれまで何を発信してきたか。信頼できる相手か
  5. 取材したくなる下調べで、想像を超える「いいもの」が描けそうだと思えたとき
図1:プレスリリースが届いてから取材に至るまで。3番目で止まるリリースが、いちばん多い。

予告編が浮かんだら、次は下調べです。その会社がこれまで何を発信してきたのか、信頼できる相手なのかを確かめにいく。

そして下調べをしてみて、想像を超える「いいもの」が描けそうだと思えたとき、取材したくなります。

つまり「この会社を取材したい」と思わせる発信のストックがあると、強い。リリース1枚で勝負しているつもりでも、実際には会社の発信の積み上げごと見られています。

一目で「これは無理だ」と置かれるリリース、ふたつの型

逆に、一目で「これは無理だ」となるリリースには、よくある形があります。ふたつ挙げます。

  • ① 旗が何本も立っている

    伝えたいことが複数あり、どれがいちばんなのか分からない。リードに何を置けばいいか決まらず、見出しが立たない。

  • ② 画が想像できない

    取材が会議室だけで完結する内容。写真も映像も一辺倒になり、紙面にも番組にも載せにくい。

  • 通るのは、社会的な大義名分があるもの

    まったく関係のない第三者が応援したくなる文脈があるかどうか。社会の文脈と自社の動きが交差する点が見えると、記者がデスクに説明しやすくなる。

図2:置かれるリリースの2つの型と、通るリリースの条件。

① 旗が何本も立っている

ひとつめは、何をいちばん伝えたいのかが、ピンとこないもの。

記事のリード、つまり書き出しに置ける内容は、ひとつに絞ったほうがいい。他にも関連して書きたいことがあるなら、優先順位をつけます。

一方で、リリースを書く側には、伝えたいことがたくさんあります。この商品には魅力が詰まっている。本当に人におすすめしたい。買ってほしい。体験してほしい。その思いが強いほど、全部を詰め込みたくなる。書く側の立場に立てば、当然の心理です。

ただ、詰め込むほど、受け取る側には何の話なのかがぼやけてしまう。予告編が流れません。

立てる旗は、1本にする。1本なら、それが何色の旗なのかが伝わりますし、ほかに目移りするものがありません。

② 画が想像できない

ふたつめは、画が浮かばないもの。

取材が会議室だけで完結してしまうような内容だと、どうしても画が一辺倒になります。色とりどりの商品が並んでいる。青空の下で笑顔が見える。読者や視聴者が実際に体験できる要素がある。そうしたものがあると、扱いが変わります。

新聞なら写真、テレビなら映像が要ります。映像を扱うテレビ局は、ここを特によく見ています。

SNSで考えるとわかりやすいかもしれません。冒頭に印象的な映像があるほうが、興味を惹きつけやすいし、見る人にもわかりやすい。記事やニュースも、その点は同じです。

通りやすいのは、社会的な大義名分があるもの

では、どういうものが通りやすいのか。

いちばんわかりやすいのは、社会的に大義名分があるものです。言い換えると「まったく関係のない第三者が応援したくなる文脈があるかどうか」。

記者が探しているのは、宣伝ではなく「記事にできる事実」です。なぜいま、この会社の、この話を載せるのか。その理由が要ります。

社会の文脈と、自社の動きが交差する点。そこが見えるリリースは、記者がデスクに説明しやすい。だから通ります。

記者は毎日、記事にできる情報を探しています。独自のものであればより歓迎されますし、社会に与えるインパクトが大きいものであれば、喜んで書きます。出す側が遠慮する理由はありません。

「うちにはネタがない」は、ほとんどの会社がそうです

ここまで読んで「そんな都合のいいネタは、うちにはない」と思われたかもしれません。

ほとんどの会社がそうです。

プレスリリースは結局、自社にすでにあるものをどう表現するか、という話です。もともとないものを無理やり作ることも、嘘を書くこともできません。だから「いま出せるネタがない」と感じるのは、自然なことです。

問題は、ネタがないことではありません。ネタが生まれる順番にあります。

プレスリリースから逆算して、仕事を始める

できあがったものをどうリリースにするか、ではなく。「こんなリリースを出せたら、おもしろいかもしれない」という仮説から逆算して、プロジェクトを始める。順番を逆にします。

  • よくある順番
    企画する▶つくる▶完成する▶これ、リリースにできる?
  • 逆算する順番
    こんなリリースが出せたら▶企画する▶つくる▶リリースを出す
図3:希少性や新鮮さは、書く段階ではなく企画の段階で仕込む。

商品開発も、イベントなどの取り組みも、社内の制度設計も。書く段階になってから希少性や新鮮さを探すのではなく、企画の段階から織り込んでおく。

ただ、これは広報担当者ひとりでは完結しません。あらゆる部署との連携が要りますし、経営者と直にやりとりして、決裁をもらわないと進まない。

だから広報担当者は、経営者と同じか、それに近い位置に身を置く必要があります。社会の感覚と自社の感覚を、常につないでおくパイプ役として。

広報は、できあがったものを外に伝える最後の工程だと思われがちです。本当は、何をつくるかを決める最初の場にいたほうがいい仕事です。

この位置に立てるようになると、見える景色が変わります。日々のニュースを「自社のリソースで解決できることはないか」という視点で見られるようになる。SNSに投稿するために「今日は何の記念日か」を知るようになる。自社の歴史をよく調べるようにもなるので、復刻企画や周年企画も思いつくようになる。

この順番を、社内だけで変えるのは簡単ではありません。

一朶の雲は、企画が立ち上がる段階から入ります。何を発信するかを決めるところから、リリースの設計、取材、記事と映像の制作まで。熊本・九州の企業の広報戦略を、外部の立場で一緒に組み立てています。

広報の進め方を相談する

まずは社内の企画に、見出しを立ててみる

「いきなり組織の話をされても」と思われたかもしれません。まずできることを、ひとつだけ。

いま社内で動いている企画を、ひとつ選んでみてください。新商品でも、イベントでも、新しい制度でも。

そして「これをリリースにしたら、どんな見出しが立つか」を考えてみる。

見出しが立つなら、その企画は外に出せます。立たないなら、それは表現の問題ではなく、企画そのものの問題です。

そして企画の段階なら、まだ手を入れられます。どこを足せば見出しが立つのか。誰に話を聞けば画が生まれるのか。社会のどの文脈に接続すれば、第三者が応援したくなるのか。そこを設計し直す作業が、広報の本体です。

プレスリリースについて、よくある質問

プレスリリースを出せば、記事になりますか。

なりません。新聞社の本社には1日100通以上のリリースが届きますが、記事になるのはごく一部です。判断は、デスクが目を通すほんの一瞬で行われます。

記者はプレスリリースのどこを見ていますか。

見出しが立つか、リードに何を置けるか、写真や映像が撮れるか。つまり「記事の形が一瞬で浮かぶか」を見ています。読み物として読んでいるのではなく、材料として見ています。

載らないプレスリリースに共通する特徴はありますか。

ふたつあります。ひとつは伝えたいことが複数あり、何の話かぼやけているもの。もうひとつは、取材したときの画が想像できないものです。

どういうプレスリリースが通りやすいですか。

社会的な大義名分があるもの。まったく関係のない第三者が応援したくなる文脈を持つものです。社会の文脈と自社の動きが交差する点が見えると、記者がデスクに説明しやすくなります。

プレスリリースの書き方を学べば、掲載されるようになりますか。

書き方だけでは足りない場面があります。リリースは、書く前の企画の段階でほとんど決まっているからです。企画を立てる段階から「どんな見出しが立つか」を考えておく必要があります。

社内に広報の担当者がいません。それでも始められますか。

始められます。一朶の雲では、広報の専任者がいない企業からのご相談も多くいただいています。何を発信するかを決めるところから外部の立場で入り、企画の設計、リリースの作成、取材と制作までを担当します。

熊本・九州で広報の相談ができる会社を探しています。

一朶の雲株式会社(熊本県山鹿市)は、元新聞記者が立ち上げた広報支援の会社です。広報戦略の立案、プレスリリースの設計、採用広報、記事と映像の制作までを一貫してご相談いただけます。熊本県内を中心に、九州全域に対応しています。

最後に

リリースは、書く前にほとんど決まっている。

受け取る側と書く側、両方を経験したうえで、いまはそう考えています。

そして、書く前の段階こそが、外の人間がいちばん役に立てる場所でもあります。社内にいると、自社の当たり前が当たり前に見えてしまう。何が希少で、何が社会とつながっているのかは、外から見たほうが早く見つかります。

いま動いている企画を、ひとつ持ってきてください。

どんな見出しが立つか、一緒に考えるところから始めます。熊本・九州の企業の広報戦略、採用広報、記事と映像の制作まで。まずは話を聞かせていただくところからで構いません。

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