「それ、面白いですね」。取材の場で、記者にそう言われたことはないでしょうか。その場は盛り上がり、記者もメモを取る。いい取材になったと感じる。
ただ、取材する側にいた人間から見ると、あれはもったいない瞬間です。その「面白い」がその場で初めて出たということは、記者が事前に調べた段階では、その面白さがどこにも置かれていなかったということだからです。
結論から書きます。記者は、取材先を「手を挙げた会社」から選んでいるわけではありません。テーマを立て、そのテーマに一番詳しい相手を探し、過去の発信をさかのぼって信頼できるかを確かめてから声をかけます。取材されるかどうかは、そのとき探しに来た記者の目にふれる場所に、情報が置いてあるかどうかで決まります。
一朶の雲株式会社は、元新聞記者が立ち上げた会社です。取材する側で見てきたことを、取材される側の会社に向けてまとめます。
この記事の要点
新聞記者は、編集局に届くプレスリリースだけを取材しているわけではありません。自分で掘り下げたいテーマや切り口、連載の企画を立て、デスクに通して書く。そうした仕事のほうが多いくらいです。
そのとき最初にやるのは、「このテーマに一番詳しい人は誰か」を探すことです。
たとえば2022年、ドローンをテーマにした連載を担当したことがあります。この年は航空法の改正で、6月にドローンの機体登録が義務化され、12月には人がいる地域の上空でも、条件を満たせば目視外で飛ばせる「レベル4飛行」が解禁されました。ドローンをめぐる制度が大きく動き、社会の関心も高まっていた時期です。このテーマに一番詳しいのは誰か。調べるなかで見つけたのが、ドローンについて継続して発信していた、ある会社でした。
そこから、その会社のプレスリリースとホームページを読み、社長のXの投稿をさかのぼり、過去に何を書いてきたのかを追いました。業界の専門誌に寄稿している。公の場で提言もしている。ほかにはいない相手だと判断して、問い合わせフォームから連絡しました。
積み重ねられた発信を見て、「この方なら、取材で専門的なことを聞いても、きちんと答えてくれる」と判断できたからです。
大事なのは、それまで一度も接点がなかったことです。記者が自分で見つけ、自分で読み、自分で信頼した。発信は、そういうふうに使われています。
会社側からは見えにくい構造が、もうひとつあります。
記者は、取材先を一人では決められません。後ろに「デスク」と呼ばれる上長がいます。「こういう会社があるんですが、どうでしょう」と概要を伝え、企画として立つと判断されれば進む。立たなければ、そこで消えます。記者が面白いと思っただけでは、記事にはできません。
だから、発信が果たす役割はもうひとつあります。記者がデスクに説明するための材料になることです。
このとき一番効くのが、実績です。しかるべき賞を取っている。専門誌に載っている。本業とは別のところで新聞に取り上げられたことがある。デスクも人間なので、興味や知識には偏りがあり、何がすごいのかを経験則だけで判断できる領域は広くありません。だから、第三者の評価が効きます。
先ほどの会社も、本業とは別の取り組みが報道されたことがありました。そうした複合的な情報を見て、「この相手なら大丈夫だ」と判断されていきます。
そしてもうひとつ。デスクは会社名では判断しません。テーマ、つまり切り口で判断します。
会社にできることは「うちを取材してください」と手を挙げることではなく、記者の頭のなかに「この会社を取材したら、面白い記事になりそうだ」という絵を描かせることです。デスクがリリースのどこを見ているかは、プレスリリースが載らない理由で詳しく書いています。
タイミングの話もしておきます。
ニュースは、こちらの都合では動きません。季節で動く。事件や事故で動く。何かの節目で動く。そのたびに記者は「この文脈で書けるネタはないか」と探し始めます。
つまり、会社が話題になる瞬間は、会社には選べません。選べないからこそ、いざというときに情報がそろっているかどうかが効いてきます。
発信は、打つものではなく、置いておくものです。誰かがいつか探しに来たときに、そこにあるかどうか。
キャンペーンのときだけ発信する会社は、キャンペーンの時期にしか見つかりません。そのときでさえ判断材料が少なく、記者が取材に行きたくても行けない。現場では、そうしたことがよくありました。
ニッチすぎる話ばかりでも通りません。専門的な話も要るし、誰が読んでも入っていける話も要る。デスクがぴんとこなければ、そこで止まります。記者がデスクに説明しやすいように、会社側で素材や情報をそろえておくと、話は格段に進みやすくなります。
ここまでは、取材に行くまでの話です。取材のあとにも、差がつく瞬間があります。
記者が「この会社は、また書きたい」と思うのは、取材そのものより、そのあとのやりとりです。
写真素材をもらえないか。この社員にも話を聞けないか。商品を見せてもらえないか。記事を良くしようとすると、取材後にお願いが増える。そこに真摯に応える会社は、次にテーマが立ったとき真っ先に思い出される。
普段は公開していない場所を見せてくれる。「これは書けないんですけど」と前置きして、背景まで話してくれる。記事には出ないが、記者の理解が深まり、記事の質が変わる。
記事の大小に関係なく、記者に丁寧に接する。それが積み重なっていきます。
意外に思われるかもしれませんが、記事にできない話をしてくれる会社ほど、記事は良くなります。書けない部分は記事に出ません。それでも記者の理解は確実に深まり、関心も高まる。理解が深まった記者が書く記事は、そうでない記事とは質が変わります。
「これは書けないんですけど」は、断りではなく、信頼の合図です。
冒頭の話に戻ります。取材の場で初めて「それ、面白いですね」と言われる会社は、面白くない会社ではありません。むしろ逆で、面白いものを持っているのに、それがどこにも置かれていない会社です。
なぜそうなるのか。自分たちが面白いと思う判断軸と、第三者が面白いと思う判断軸が、そもそも違うからです。毎日やっていることは、当たり前になる。当たり前になったものは、わざわざ発信しようと思わない。
「うちには特別なものなんてないよ」とおっしゃる会社でも、話を聞いていくと必ず何かが出てきます。当たり前になったものを「それ、外から見たら珍しいですよ」と言えるのは、たいてい外にいる人間です。だから一朶の雲は取材のとき、社内で誰も面白がっていないことを、いちばん時間をかけて聞くようにしています。
一朶の雲ではこれまで、報道機関に直接連絡をしたことが何度かあります。「これは記事にしたほうがいい」と伝えるときです。共通しているのは、はっきり絵になること、ニュースとしての価値が明確なこと。デスクを通る見込みが立つから、連絡できます。裏を返せば、そこがはっきりしていないものは、外から持ち込むこともできません。
社内で当たり前になっていることに、記事の種があります。
一朶の雲は、元新聞記者の視点で、社内では誰も面白がっていないことから掘り起こします。記者が探しに来たときに見つかるように、何をどこに置いておくかまで設計します。
広報の進め方を相談する自社の魅力を外に伝えようとするとき、「これは、社外の人が面白いと感じるだろうか」という目線で考えてみてください。
一人の記者に刺さればいい、ではありません。その記者がデスクに説明でき、読者が読みたいと思い、求職者が興味を持つ。そこまで届く形になっているかどうか。
発信は、記者のためにやるものではありません。ただ、記者が見つけられる場所に置いてあるかどうかで、その会社に起きることは確実に変わります。
プレスリリースだけでなく、記者が自分でテーマを立て、そのテーマに一番詳しい相手を探して取材することも多くあります。そのとき、会社のホームページやプレスリリース、経営者のSNSなど、過去の発信をさかのぼって確かめます。
日々の取り組みや実績を、継続して発信していることです。記者が探しに来たときに情報がそろっている会社は見つかりやすく、信頼できる相手だと判断されやすくなります。
それだけでは決まりません。記者の後ろにはデスクと呼ばれる上長がいて、企画として立つかどうかを判断します。受賞歴や専門誌への掲載などの実績は、記者がデスクに説明する材料として効きます。
写真素材の提供や追加の取材など、記者からのお願いに丁寧に応えることです。そうした会社は、次に関連するテーマが立ったとき、真っ先に思い出されます。
多くの場合、話題がないのではなく、社内で当たり前になって見えなくなっているだけです。社内と社外では「面白い」の判断軸が違うため、外の視点を入れると見つかることがよくあります。
一朶の雲株式会社(熊本県山鹿市)は、元新聞記者が立ち上げた広報支援の会社です。記者の視点で、取材につながる発信の設計から、プレスリリース、記事・動画の制作までご相談いただけます。
取材する側にいたころ、見つけてもらえないまま埋もれている会社を、たくさん見てきました。面白いものを持っているのに、それがどこにも置かれていなかった会社です。
記者が探しに来たときに、見つかる場所にある。それだけで、会社に起きることは変わります。
社内で「当たり前」になっていることを、聞かせてください。
それが外から見て何なのか、どこに置けば見つけてもらえるのか。元新聞記者の視点で一緒に考えます。熊本・九州の企業の広報戦略、プレスリリース、記事と映像の制作まで。
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