開いた扉から明るいオフィスをのぞく求職者と、手を止めて手を振る社員。手前の壁には掲示物が貼られ、1枚だけ赤く示されている。求職者の頭上には、ここで働く自分を想像する吹き出し

採用がうまくいかない会社が、求人の前に整えたい5つのこと。100社超の採用取材で見えた経営者の打ち手

「こんにちは!」

取材でお邪魔した会社の扉を開けた瞬間、奥の席から、手を止めた社員の声が飛んでくる。

こういう会社には、だいたい人が集まっています。

結論から書きます。採用がうまくいくかどうかは、求人原稿を書く前に、ある程度決まっています。書き方で変わる部分もありますが、原稿をどれだけ整えても応募が動かない会社には、たいてい原稿の外側に理由があります。

一朶の雲はこれまで、熊本を中心に100社以上の企業の採用取材を手がけ、求人記事や採用ページの原稿を書いてきました。その現場で見えてきた「求人の前に、経営者が手をつけられること」を5つにまとめます。お金がかかるものもあれば、明日から始められるものもあります。

この記事の要点

  • 求職者は、会社の玄関をくぐった瞬間から「ここで働く自分」を想像している
  • 社内向けの張り紙や表彰は、社外の人にこそ効いている
  • 経営者が会社にいないと、社員の言葉から熱が消え、求人記事に出る
  • 新しいオフィスは「人が集まる理由」になり、言わずに会社の体力を伝える
  • 「どんな会社ですか」に、誰に聞いても同じ答えが返ってくる会社は強い

求人の前に、経営者が手をつけられる5つのこと

5つを先に並べておきます。いずれも、求人原稿そのものの話ではありません。

  1. 挨拶・照明・取り次ぎを整えるかかるもの:ほとんどなし。求職者は玄関をくぐった瞬間から判断を始めている
  2. 社内の表彰や大切な言葉を、見える場所に貼るかかるもの:紙一枚。社内向けの掲示が、社外の人に会社の価値観を伝える
  3. 経営者が、会社にいる時間をつくるかかるもの:経営者の時間。社員の言葉の温度が、そのまま求人記事に出る
  4. オフィスに投資するかかるもの:大きな投資。人が集まる理由になり、会社の体力も伝わる
  5. 会社を一言で表す言葉をそろえるかかるもの:設備投資なし。5つのなかでいちばん大事で、いちばん手をつけやすい
図1:求人の前に、経営者が手をつけられる5つのこと。5番目がいちばん大事で、いちばん始めやすい。

1. 求職者は、玄関をくぐった瞬間に「ここで働く自分」を想像している

まずは、建物に入った瞬間の話です。

取材で訪ねて「ここは人が集まりそうだ」と感じる会社には、共通するものがあります。挨拶がきちんと返ってくる。トイレがきれい。照明が明るく、空気がどんよりしていない。

逆に「これは厳しい」と感じるのは、その反対です。挨拶がない。暗い。

意外と見落とされがちなのが、取り次ぎです。「〇〇さんとお約束しているのですが」と伝えたとき、担当者がどこにいるのか誰も把握していない。何人かの間を行ったり来たりして、ようやく会える。

  • 人が集まりにくい会社の玄関

    挨拶が返ってこない。照明が暗く、空気が重い。担当者の居場所を誰も知らず、取り次ぎに時間がかかる。

  • 人が集まる会社の玄関

    扉を開けた瞬間に挨拶が返ってくる。トイレがきれいで、照明が明るい。担当者の居場所を誰かが把握していて、すぐにつながる。

図2:取材で訪ねたときに見えた、人が集まる会社と集まりにくい会社の玄関。

なぜ、これが採用に関係するのか。面接や会社見学に来る求職者も、まったく同じ体験をするからです。

求職者は、建物に入った瞬間から「この会社に入った自分」を想像しています。毎朝ここで挨拶を交わす自分。このトイレを使う自分。この照明の下で働く自分。そこで「ここなら前を向けそうだ」と思えなければ、求人原稿でどれだけ魅力を伝えても、最後のひと押しが効きません。

取り次ぎも同じです。担当者の居場所を誰かが把握している会社は、社内で情報が回っている会社です。求職者はそこまで言葉にしなくても、「なんとなく、ちゃんとしていそうだ」と感じ取ります。

どれも、お金はほとんどかかりません。

2. 階段の張り紙は、社内向けなのに社外に効いている

建物に入って、もうひとつ必ず目に入るものがあります。壁の張り紙です。

ある会社では、社内で大切にしたい言葉を毎月変えて、階段に貼っていました。別の会社では、月間MVPのような社内表彰を掲示していて、誰がどんな理由で選ばれたのかが分かるようになっていました。

本来は、社内向けのものです。それが、社外の人の目にも入る場所に貼ってある。これが、外から見ると大きく効いています。

社員を大事にしている会社だと分かる。どんな価値観を大切にしているのかが分かる。真面目さや、会社のカラーまで見えてくる。求人原稿に「社員を大切にする会社です」と一行書くより、階段の一枚の紙のほうが、よほど説得力があります。

表彰された社員に話を聞くと、よく出てくるのが「全員に認められたようで、うれしかった」という言葉です。とくに、若い社員から。

頑張ったら、ちゃんと見てもらえる。報われる。その実感が、「この会社で働き続けたい」と思うきっかけになっています。

大事なのは、報奨金の額や贈り物といった短期的な個人の利益ではないということです。それ以上に「社内の人に認められた」ことのほうが、意外なほど大きい。

採用と定着は、つながっています。いまいる社員が「報われている」と感じている会社は、外から見ても、ちゃんとそう見えます。

3. 経営者が会社にいないと、求人記事から熱が消える

業種にもよりますが、経営者がほとんど会社にいない会社は、採用であまりいい話を聞きません。

外回りや会合で忙しいのは、経営者として当然のことです。ただ、社員の側から見るとどうか。

社長が顔を出さない。現場のことを知らない。報告や相談をしようにも、そもそも会えない。社員はそれを、わざわざ言葉にはしません。それでも感覚として「現場がないがしろにされている」と受け取っている可能性があります。

そして、それは求人記事にそのまま出ます。

求人記事をつくるとき、一朶の雲は社員に話を聞きます。そのとき、会社のことをあまりよく言わない人がいる。言葉は丁寧でも、どこか他人事のように話す。そうなると、いい記事は書けません。

これは表現の問題ではありません。求人記事の材料は、社員の言葉です。社員が会社を好きでなければ、どれだけ言葉を選んでも、記事に熱は乗らない。そして求職者は、その温度をちゃんと読んでいます。

  • 経営者が現場にいない会社
    報告や相談の機会がない▶社員が会社を他人事のように話す▶求人記事に熱が乗らない
  • 経営者が現場にいる会社
    社員が報告・相談できる▶社員が会社を自分の言葉で語る▶求人記事に熱が乗る
図3:求人記事の材料は、社員の言葉。経営者が会社にいるかどうかが、その温度を左右する。

社員の言葉を、求職者に届く形にする。

一朶の雲は、経営者と社員の両方に取材し、会社のいまを言葉にするところから入ります。求人記事、採用ページ、採用動画、SNSまで、同じ温度で届くように設計し、制作します。

採用広報を相談する

4. オフィスを新しくした建設会社で、昼休みに起きたこと

冒頭で「お金がかかるものもある」と書きました。その代表が、オフィスです。

オフィスをリノベーションした、ある建設会社を取材したことがあります。

建設会社なので、社員はふだん各現場に散っています。それが、新しいオフィスができてから、昼休みにわざわざ会社に戻ってきて、お昼を食べるようになったそうです。しかも、みんな戻ってくる。

そうなると、会話が生まれます。現場が違えば、顔を合わせる機会は少ない。それが毎日の昼休みに集まることで、互いを深く知る機会が増えた。結果として、社内の結束が強くなったと聞きました。

オフィスは「働く場所」である前に、「人が集まる理由」になります。

採用への効果は、ほかにもあります。ひとつは見た目です。ホームページや求人ページに新しい社屋が映ると、求職者は「ここで気持ちよく働けそうだ」というイメージを持てます。

もうひとつは、少し間接的な効果です。オフィスを新しくしたということは、それだけ投資できる余力がある、ということでもあります。つまり、きちんと稼いでいる。求職者にとっては、それが安心材料になります。

「うちは儲かっています」とは、なかなか表立っては言えません。新しいオフィスは、それを言わずに伝えてくれます。

言わずに伝わる。だから効きます。

5. 「どんな会社ですか」に、誰に聞いても同じ答えが返ってくるか

5つのなかで、いちばん大事なのがこれです。採用の取材では、必ずこう聞きます。

「あなたたちは、どんな会社ですか」

ここで、そろった答えが返ってこない会社があります。答えがないわけではありません。社長はこう言う。人事の担当者はこう言う。現場の社員は、また別のことを言う。

聞く人によって、答えがぶれる。

ぶれているのは、取材に来た人に対してだけではありません。社員同士でもぶれているし、求職者に対してもぶれています。だから、言葉にしておく必要があります。

ミッション・ビジョン・バリューのように、きれいに整えていなくても構いません。「うちの社風を一言で表すと、こうです」「なぜなら、こういうことを大事にしてきたからです」。これを、社長だけでなく、社員の誰に聞いても同じように話せる。そういう会社は強い。

いまはAIを使えば、整った求人原稿を誰でもつくれます。文章の見た目では、もう差がつきません。それでも、自分たちのカルチャーを一言で言える会社は、ほかの会社とは違う書き方ができる。独自性が出る。会社の芯にある言葉は、AIが代わりに見つけてくれるものではないからです。求人の文章と応募の関係は、求人に応募が来ない会社に足りないのは、文章力ではないで詳しく書いています。

そして実は、これが5つのなかでいちばん手をつけやすい。設備投資もいりません。社内だけでも始められます。

ただ、ひとつだけ注意があります。社内の人だけで話していると、当たり前すぎて誰も口にしないことがあります。毎日そこにいる人にとっては空気のようなもので、実はそれこそが会社らしさだったりする。外の人間が聞いて、初めて「それ、すごいですね」と出てくる言葉がある。取材の現場で、何度もそうした場面に立ち会ってきました。

社員の誰に聞いても同じ答えが返ってくる状態のつくり方は、経営理念(MVV)が浸透していない会社に共通する3つのことで詳しく書いています。

採用と求人について、よくある質問

求人を出しても応募が来ない原因は何ですか。

求人原稿の書き方だけでなく、職場の雰囲気、社員の会社への思い、会社として何を大事にしているかといった、原稿の外側にあることが多いです。求職者は求人記事だけでなく、会社見学や面接で目にしたものも含めて判断しています。

求職者は、会社見学や面接で何を見ていますか。

挨拶が返ってくるか、照明や水回りが整っているか、担当者への取り次ぎがスムーズかといった点です。建物に入った瞬間から「ここで働く自分」を想像しているため、小さな違和感が判断に影響します。

お金をかけずに、採用のためにできることはありますか。

あります。挨拶や取り次ぎを整える、社内の表彰や大切にしている言葉を見える場所に掲示する、会社の特徴を誰に聞いても同じように話せる言葉にする、といったことは、設備投資なしで始められます。

社内の表彰や掲示物は、採用に関係しますか。

関係します。本来は社内向けのものでも、社外の人の目に入ると「社員を大事にしている会社」「こういう価値観を大切にしている会社」だと伝わります。求人原稿に一行書くより、説得力を持つことがあります。

採用と定着は、つながっていますか。

つながっています。いまいる社員が「頑張りが報われている」と感じている会社は、外から見てもそう見えます。社員の言葉は求人記事の材料にもなるため、定着している会社ほど、求人にも熱が乗ります。

熊本で、採用がうまくいかない理由から相談できる会社はありますか。

一朶の雲株式会社(熊本県山鹿市)は、熊本を中心に100社以上の採用取材を手がけてきた会社です。求人原稿の手前にある会社の言葉づくりから、求人記事・採用動画・SNSでの発信まで、一貫してご相談いただけます。

求人原稿は、会社の「いま」を映している

振り返ると、5つのなかに、求人原稿そのものの話はひとつもありません。

挨拶。張り紙。経営者の居場所。オフィス。そして、言葉。どれも、経営者が決められることです。

求人原稿は、会社のいまを映す鏡のようなものです。鏡をいくら磨いても、映っているものが変わらなければ、映る姿は変わらない。逆に言えば、映るものを整えれば、求人は変わっていきます。

まずは一度、自社の玄関から、求職者のつもりで入ってみてください。挨拶は返ってくるか。照明は明るいか。階段の壁には、何が貼ってあるか。そこから始められることは、たいていあります。

求職者の目線で、御社の玄関から一緒に入らせてください。

挨拶、掲示、社員の言葉、会社の芯にある言葉まで。外の目で見て、求人の前に整えられることを一緒に洗い出します。熊本・九州の企業の採用広報、求人記事、採用動画、SNSまで。まずは話を聞かせていただくところからで構いません。

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